経結膜脱脂法+脂肪注入
(微細分離脂肪注入またはマイクロCRF)

ここでは経結膜脱脂法+脂肪注入(微細分離脂肪注入またはマイクロCRF)について書かせていただきます。くれぐれも大切なことは、施術方法を決めるのではなく、なぜそのような施術方法があるのかを知ることです。また、同じような治療方法であっても医療機関ごとに手技やテクニックおよび術後の結果は違いますので症状にあった説明をお受けになることがとても大切です。

目の下のふくらみを下まぶたの裏から取り、そのあとに目元にご自身の脂肪を注入します。ご自身の脂肪は例えば下腹部または太ももの内側などから小さな穴から細かく採取します。

≪一般的な特徴≫

  • 目の下のふくらみがなくなると同時に頬が持ち上がってみえます。
  • 目の下のふくらみがあった部分に脂肪注入を行う場合には凸凹にならない高度な技術が必要です。
  • ふくらみが無くなっただけでたるみがよく見える場合には必ずしも脂肪注入は必要ありません。
  • ふくらみが無くなっただけの目元より、より立体的な目元にすることが可能です。
  • 脂肪をやや多めに入れるためふくらみ取り(経結膜脱脂術)のみのときより術後に腫れます。
  • 脂肪の定着に個人差があります。

経結膜脱脂法+脂肪注入 症例紹介

ここでは経結膜脱脂法+脂肪注入の症例紹介を行っております。
リスク:腫れ、内出血、痛み、しこりの形成、左右差、脂肪生着率の個人差などあります。
詳細は後述しております。
費用:
経結膜脱脂法+微細分離脂肪注入 44万円(税込み)
経結膜脱脂法+マイクロCRF注入 55万円(税込み)

目の下のクマ治療 経結膜脱脂法+微細分離脂肪注入 経過の一例

経結膜脱脂術+脂肪注入の我々の考え

当院では目元以外の部位からの脂肪注入の方法として2種類の方法を採用しております。
一つは、微細分離脂肪注入、もう一つはマイクロコンデンスリッチファット注入(マイクロCRF注入)です。

微細分離脂肪注入とは

通常の脂肪注入は、教科書的には脂肪を採取して生理食塩水などで洗浄して注入していきます。

目元治療の場合は、膨らみのあった皮膚の極めて薄いエリアに注入します。
私たちは凸凹にならないように注入しますが、その際に脂肪をある一定の基準を満たす状態まで加工しております。
そのことで形と定着率が安定します。
これは我々の注入法のための加工の仕方ですので、優れているとか優れていないなどという話ではありません。
クリニックごとに独自の注入技術を持っており、その技術を支えるための脂肪の加工ということになると思います。
目元の脂肪注入は、脂肪の加工の仕方よりもはるかにその注入技術の方が結果に左右します。
一般的な脂肪注入と区別をするために、我々が加工した脂肪のことを微細分離脂肪注入と名付けております。

経結膜脱脂術に脂肪注入を併用する理由

術前のカウンセリングで、脂肪注入のお話をしますと「脂肪を入れるまではちょっと・・・」とおっしゃる方がいらっしゃいます。お気持はよくわかりますが、ここでどうして注入をするのかについてお話しておきます。

 

大きく二つに分けることができます。

理由 1

一つ目は、この方法でないと解決出来ないクマがあります。言い換えると、この手術以外では手術前より良くなったように見えないことがあります。症状によってはこの手術でも完全にくまが良くなるわけではないが、これ以外の方法では全くよくならないかむしろ悪化することさえあります。

例えば下の方のような目元の場合です。一見、ふくらみが無くなればよさそうに見えるかも知れません。ところが、ふくらみが無いと認識できる状態まで経結膜脱脂術(脱脂)を行うと、目元にふくらみは無いけれどもそこのエリアが暗い状態になってしまいます。そこを明るくなるようにするために微細分離脂肪注入を行っております。この方の場合は、他のどの手術方法でもここまでの明るい目元にはなり得ません。

(もしも、どうしても脂肪は入れたくないとおっしゃられた場合の次の方法は、この方の場合は経結膜的眼窩脂肪組み換え術(≒経結膜的ハムラ法≒裏ハムラ法+当院内部処理)をお話させていただくと思います。症状に対する治療の優先順位は人それぞれ異なります。それに個人個人の環境(腫れ、ご料金など)が加味されて、相談の上で治療方針が決定します。)

理由 2

二つ目は、状態によってはとても美しい立体感が作れます。その形は他のどの手術方法でも作れない立体感です。

例えば下の方のような場合です。目の下の膨らみとその下の影をなくしたいと思われた場合には、経結膜的脱脂術(いわゆる脱脂)のみで十分だと思われます。ただし、ふくらみを無くしたとしても頬が持ち上がることはありません。症例写真では、膨らみが無くなったのみならず、涙袋のすぐ下から頬がフワっと持ち上がっております。このような目元を望まれており、永続的な治療方法を望まれる場合にはこの治療方法が適応になります。この方の場合には経結膜的眼窩脂肪組み換え術および頬前面の引き上げを同時に行ってもここまでの立体感にはなりません。

経結膜脱脂術のみをされた方で、膨らみは無くなったけど目の下がのっぺりして貧相になったとお悩みの方はこの治療方法を応用すればよくなります。脱脂(または脱脂+脱脂分を注入)を受けられた後にこのようなご相談でこられる方は、(ご本人様いはく)術前にそこまでの説明を聞かずに受けられている方が多いです。今後、目の下の膨らみ取りをご検討の方はあらかじめ確認されるとよいと思います。

つまりこの治療方法の適応は

①この治療方法以外では解決が難しい方

②それ以外の方法でも今よりよくなる方法はあるが、より美しい形を望む方 になります。

その他、細かい点においては色味の変化や皮膚の緩み具合によっては別の方法(例えば経結膜的眼窩脂肪組み換え術など)を取った方が良い場合もありますのでその辺は症状に合わせてよくご相談されるとよいと思います。

脱脂+微細分離脂肪注入と裏ハムラ法(経結膜ハムラ法 経結膜的眼窩脂肪移動術)との形の比較

どちらの治療方法も単なる経結膜脱脂法ではないため、涙袋のすぐ下から頬につながる凸面ができています。そのため、クマが綺麗に改善しています。

裏ハムラ法に比べて脱脂+微細分離脂肪注入の方が涙袋がよりはっきりして立体的な目元に見えます。

一方、裏ハムラ法は涙袋はそこまで出ていませんが、その分くぼみ(窪み)は全くありません。

様々な治療方法による症例を数多く経験するとわかりますが、このような立体感の違いは傾向としてよくみられます。ただし個人の症状にもよります。

どちらがよい、悪いということではなく、個人の症状と好みにより治療方法の適応を決める必要があります。

目の下の脂肪注入の注入場所について

この手術方法で明確にしておかなければいけないことは脂肪注入をどのエリアに注入するかということです。

似て非なる方法でも治療は可能です。

それは膨らみを脱脂で取り除いたあとに、そこより下の頬の低さに対してのみ脂肪注入として治療をする方法です。つまり、脱脂したエリアには脂肪を入れずにおこないます。

しかしながら、その方法では一緒に治療を受けるメリットはあまりありません。それであれば脱脂のみで目元を完成して必要があれば後日脂肪注入をされるとよいと思います。必ずしも高額な料金を払う必要がないかもしれません。

経結膜脱脂術と微細分離脂肪注入(またはマイクロCRF)を同時に行う最大のメリットは涙袋のすぐ下から脂肪注入で形をつくることにあります。そうすることでより美しい目元が作れるからです。(この二つを比べた場合には、技術的には天と地ほど難易度に差があります。)

 

そしてよくある質問としては「脱脂したあとにやっぱり脂肪を入れたいと思った場合にはできますか」という質問です。結論から言いいますと、できます。ただし、脱脂のみで目元を完成させる場合の脱脂の仕方と脱脂+微細分離脂肪注入のときの脱脂の仕方は違いますのでメリットを最大限に引きだすのであれば、場合によっては再度脱脂の追加処置が必要になる可能性はあります。

詳しくは「経結膜脱脂法後の脂肪注入は可能か」をごらんください。

脂肪注入後のしこりについて

脂肪注入をするとしこりになるのではないかと思われている方がいらっしゃいます。

結論から申し上げますと触るとコロコロ触れるシコリができる可能性はあります。

しこりができにくい条件は

①注入量を少なくする。

②極力分散して注入し、まとめてひと塊で注入しない。

などあります。

①注入量を少なくするとほとんどシコリにはなりません。しかしながら、控えめな脂肪注入量では吸収が進んでしまいがちです。かといって、たくさんいれると必ずシコリができるかというとそうでもないです。というよりは極少数です。シコリが触れる方の大半は、半年から1年くらいで目元や頬をぐりぐり触るとこれかな?と思うようなコロコロが触れるという感じです。半年くらいまでは評価できません。脂肪注入をすると初めは全員硬く触れ、3ヶ月くらいするとほとんどの人は触れなくなります。3ヶ月でコロコロが触れていても半年くらいで触れなくなる方はたくさんいらっしゃいます。私自身が治療をさせていただいた方で頬前面のくぼみにかなり多めの注入をさせていただいた方で1年以上皮膚の深いところに鉛筆より少し細いくらいの太さのコロコロが触れていた方がいらっしゃいましたが、2年過ぎた時には触れなくなっていた方がいらっしゃいました。ただし、その方は治療をさせていただいたときよりも体重が数kgほど落ちたということでしたのでそれも関係あるのかもしれません。

 

②極力分散しながら注入することは医師の努力で可能です。だいたい0.1ccの脂肪を数回に分けて注入するという感じです。ただし、俗称ゴルゴラインと言われる頬のくぼみなどはどうしても分散しつつも多めに入れないと持ち上がってこないなどの状況があり得ます。部分的に多めにいれないとうまく結果が出せないということはよくあり、その部位は人それぞれ症状によって違います。

 

≪結論≫

脂肪注入ではシコリができることがあります。

シコリができにくいように工夫することはできます。

どんなに少量の脂肪注入を最大限分散して注入したとしても医学的にシコリができる可能性を絶対にゼロにすることはできません。

なぜならば脂肪組織の移植治療だからです。

ほとんどの人は術前の段階から手術なのでそういうものだということで気にされません。

それでも脂肪注入の痕跡が触れるのが嫌だという方はどのような脂肪注入もお受けにならない方がよいと思います。(ちなみにヒアルロン酸注入でもコロコロを触れます。眼窩脂肪組み換え術でも手術後の組織の硬さを1年過ぎくらいまで触れることがあります。)

治療の適応にならない方

治療の適応にならない方は

 

①脂肪を入れたくない方

 どうしても脂肪を入れたくないですと言われる方がいらっしゃいます。もちろん脂肪を注入しない方法で最善の方法をご相談されるとよいと思います。

 

②脂肪注入によって作られる立体感が好きではない方

 さんざん「立体感」とおはなししておりますが、頬が持ち上がることがあまり好きではない方もいらっしゃると思います。症例写真などを拝見されて好きかどうかをご自身でまず判断されるとよいと思います。経験的にはほとんどの方は確かにこの形は美しいとおっしゃられますがそうではない方も少数ですがいらっしゃいます。

 

③別から脂肪を採ることが嫌な方

 脂肪を採取することにどうしても抵抗があるという方もいらっしゃいます。ほかの方法でもご自身が満足される状態が期待できそうであれば別の方法をご相談されるのがよいと思います。

 

④目の下のたるみが皮膚、筋肉による場合

 目の下のたるみは皮膚、筋肉、脂肪および骨格の要素で決まります。そのうち、皮膚、筋肉によるたるみが主な場合にはこの治療方法は向きません。むしろ、たるみが強調される場合もあります。

 

⑤極端に痩せている方

 とっても痩せていると脂肪の採取が困難な場合があります。

治療に注意が必要な方

脂肪を注入するということにおいて注意が必要な方は以下の方です。

  • 糖尿病がある方:脂肪採取部の感染のリスクが高まるため慎重にお伝えしております。
  • ご年齢が65歳以上くらいの方:脂肪採取部の感染のリスクが高まるため慎重にお伝えしております。

脂肪採取に関して

脂肪採取は主に太ももの内側から行います。
術後は1~2週間の筋肉痛様の痛みと内出血がでることがあります。

1か月くらいで押すとまだ少し痛みがでることもあります。
一時的に硬さがでることもありますが、数か月の単位で落ちついてくることが通常です。

今まで言われた気になること

ここでは経結膜脱脂法+微細分離脂肪注入を行って気になると言われたこと、または私自身が気になったことなどを書かせていただきます。

ただしこれは我々のグループでの話でありこの手術がこういうものであるというお話ではありません。

 

経結膜脱脂法+脂肪注入のあり得るリスク・副作用・合併症

  • 感染
  • 腫れ
  • 結膜の充血
  • ダウンタイム中の出血(まれにフレッシュな出血が起こることがあります。目から出血しているように見えると思います。)
  • 血腫(内出血の強いもの)→内出血後の色素沈着が長引く可能性
  • 目元が窪んで見える可能性
  • シワが増える可能性
  • クマの「色」が濃く見える可能性
  • 上まぶたが窪む可能性
  • 目が窪む可能性
  • 注入した脂肪がシコリになる可能性
  • 微妙な凹凸感が出る可能性
  • 笑ったときに膨らみが目立つ可能性
  • 膨らみ過ぎたと感じる可能性
  • 目が小さくなったと感じる可能性
  • 左右対称にならない可能性(全くの左右対称はほとんどありません)
  • 涙袋が出てくるとその下の影が気になる可能性
  • 涙袋が出てこない可能性
  • 涙袋が微妙に変化して見える可能性
  • もとに戻せないこと
  • 脂肪採取部の痛み、凹凸感、硬さ、違和感
  • 脂肪採取部の針穴(4mm前後)のあとが残る可能性、傷の盛り上がり(肥厚性瘢痕)ができる可能性
  • 脂肪の生着率に個人差があること
  • 脂肪注入の針穴の跡が残る可能性
  • 結膜のむくみが長引く可能性
  • CRPS(複合性局所疼痛症候群):行った処置の程度に対して説明がつかないような大きな痛みが出る可能性
  • 痛みどめなど内服薬のアレルギー反応
  • その他想定しうる範囲のことを超える体の反応があり得ること

施術についての一般事項

我々が行う経結膜脱脂法+微細分離脂肪注入の一般事項を書いておきます。

麻酔 局所麻酔(希望により緊張をとる点滴可)
施術時間 70分~90分程度(脂肪を加工する時間を含みます)
腫れ 5日~10日程度(個人差があります)
抜糸 不要
入院 不要
通院 基本的には不要
(経過を診せて頂けるとありがたいです)
メイク 翌日から可能(できれば翌々日から)
シャワー 翌日から
洗髪 翌日から
相談日に治療 不可

筆者紹介

著者
石川勝也
役職
プラストクリニック院長
資格
日本形成外科学会認定専門医
日本美容外科学会認定専門医(JSAS)
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